19日目② ラサ 11月28日(日) 新市街?

西蔵牛排餐庁



バルコル


 チャクポリを見学した後、ポタラ宮の方に歩いて行き、レストラン「西蔵牛排餐庁」でガイドのジェムツォさんと昼食。小ぎれいなレストランです。BGMになんとイギリスのロックバンド、プロコル・ハルム、1967年のヒット曲、A Whiter Shade of Pale(邦題:青い影)が流れていました。と言っても今、若い人は知らないだろうなー。日本でももちろんヒットし、その辺の喫茶店でよーくかかっていたんですよー。息の長い曲なのでどこかで聞いたことがあると思います。ウィキペディアによるとジョン・レノンもこの曲が人生でベスト3に入るほど好きだったそうです。
 ヤクミート入りの麺とツァンパを食べました。女の子のこぶしくらいの大きさのツァンパは保存がきくので二つ三つポケットに入れて持ち帰りました。もっともなんだか味がなくて、それだけで食べるのはワビシイ感じ。
 ゆっくりミルクティを飲んで、午後はジェムツォさんと別れて、ラサ川の中洲近くの市街を見に行くことにしました。西蔵電視台の方へ歩いて行くと黄金のヤクの像。なんだかけばけばしいです。西蔵電視台つまりテレビチベットの建物の向こうにポタラ宮が見えます。

 ラサ川の中洲の方は中国人が住んでいるエリアと聞いていたので、見ておこうと思いました。支流の橋を渡ると、なんだか急に賑やかになります。ショッピングセンター、ホテル、レトロな遊園地、かなり古めかしいローラースケート場、数多い商店。経済活動が活発だということはすぐにわかります。川の方に近づくと、中庭風のレストランがあったり、なぜかある一角は美容院ばかりが並んでいたりします。さらに川沿いまで出ると本当に中洲に建築中の5階建てくらいの集合住宅が何棟も。これは、中国の他の町に多く見られる20階とか30階くらいありそうな団地とはちょっと違います。まだまだ土地に余裕があるのでしょうか。でも中洲に住むっていうのはなんとなく不安ですね。いつ氾濫しないとも分からないと思いますけどね。とにかく集合住宅が多く建っています。 
 また少し行くと、ペット・ショップが並んでます。すぐ前の空き地では犬を連れた人達が10人と10匹くらい集まって、何やら情報交換しています。そう言えば、成都ではレトリバーなどの大型犬をたまーに見かけました。ラサではさすがに全然見ませんでしたがいるんですね。今日は日曜日ですから、この一角に集まってきた様です。ペット・ショップでは小さいオリに子犬を何匹も入れてます。人権も動物の権利も大切にされてないと全く優雅じゃないですね。なんとなくこのあたりは居心地の悪さを感じます。
 
 バルコルに戻り、チベット人の巡礼者達に交じって時計周りに歩きます。チベット全土からの巡礼者が農閑期にやって来るので、かなりの人ごみです。地方からの長い旅の後は服も傷み、かなりくたびれて見えるけれど、その内面は信仰に厚い人達。さっきまでの商業主義の雑踏とは全然違います。しかし、今ひとつ何が違うのか、よくわからない。贅沢じゃない。華美じゃない。祈りがある。内面の強い信仰心がある。派手じゃなく素朴。人に見せる為の犬じゃなくて、一緒に巡礼する犬。流行り廃りではなく、長く持つもの。怒鳴り合うのではなく、微笑み合う。大らかでセカセカしない。
  
 欧米人がアジアの国、例えば日本を2〜30年前に見たとします。すると、資本主義の発展と共に、都市化とか核家族化、拝金主義などのあまり嬉しくない変化が起こっていることに気づき、こう言います。
「経済が発展しても素朴な日本人の良さをなくさないで欲しい。」
 これは多分、万国共通の現象ではないかと思われます。質や程度の差が多少はあるでしょうが。そのくらい経済発展つまり「金」は人を変えてしまう。日本人から中国人を見ると、拝金主義的傾向は確かに見えます。が、中国人の率直な明るさというのはまだ、かなり残っていると思います。もちろん政府や軍、大企業など社会の指導者達は、これは全体主義のイヤな部分をせっせと実行している。一人一人の普通の中国人は愛すべき人達だと思います。
 そして、チベット人を見るとこれは、人が良い。まだまだ拝金主義に毒されるほど浸かってない。元遊牧民が町に住むことは大変なのですが、チベット人の良さが発揮されている。耐えているのでしょう。チベット人の置かれた状況は一旅行者にはわかりません。ただ資本主義の発達と都市化などの問題だけでなく、植民地的支配をされている。情報を遮断されている。二重三重に縛られているというのが実態です。
 
「経済が発展しても素朴なチベット人の良さをなくさないで欲しい。」という希望はちょっと虫がいい。ナイーブあるいはロマンティックかも知れません。チベットから目が離せません。

 バルコルのカフェの2階でポットのミルクティを飲み、夕日を撮るのに視界に入る武装警察の二人をうまく外してシャッターを切ります。ラサもあと明日1日を残すのみ。