19日目① ラサ チャクポリ(薬王山) 西蔵誘惑熱愛人民 11月28日(日)


 雀が入ってくる屋上のレストランで朝食。チュンチュン鳴きながら机や椅子の上を飛び回ってパンくずをついばんでます。

 今日は、チャクポリ(薬王山)の見学です。ジョカン(大昭寺)前広場から西、ポタラ宮前広場へ真っ直ぐ伸びる宇拓路を歩いて行きます。ホテルやデパートに色々な商店が立ち並ぶラサの繁華街とも言える通りです。ポタラ宮広場にぶつかると左に折れて江蘇路に当たったら右に行きます。ラサ河の支流を左に見る感じで行くと、電気街みたいなところに出ます。コンピュータ、デジカメ、携帯電話、電子製品以外ではマウンテン・バイクの店などもあります。ちょっと冷やかしてみますが、ノートパソコンの売れ筋は日本円で5〜6万円くらいの物が多い様です。
 
 さらに行くとチベット自治区政府が右に見えます。「西藏誘惑熱愛人民」というなんだか派手なスローガンが掲げてあります。まあ、日本人からすると、この文字はすごいスローガンに感じますが、中国語の語感では熱愛というのは実はそれほどのものではないのじゃないか、と、疑っています。「熱烈歓迎」などというのもよく見ますよね。これも大した熱ではない、と思います。あるいはひょっとすると大した熱かも知れない、明後日の方向で。
 それにしても、公務員が市民を思って仕事をするのは当たり前。それをことさら高いか低いかは別として熱愛人民などと、鼓舞しなければならないところが怪しい。自惚れを感じる。例えば、靴磨きの少年が毎日、一生懸命靴を磨く。その上に、家族や地域、それに国の事を思ってるなら、それに比べて熱愛人民などと言っている手合の正味のところはいかばりか。子供の国の豆人形ほどもないでしょう。
 この批判は、勝海舟の氷川清話「国家のためか、うぬぼれか」(244ページ)というところにあったセリフのパクリです。以下ネタ明し。

 長いけれども引用します。
 『先日もある役人がきたから、「お前ももう止めてはどうだ。」と言ったら、「これも国家のためだから、いやいやながらやめるわけにはいかない。」と言った。そこでおれは、「それはいけない、自ら欺くにもほどがある。昔にも、お家のためだから生きるとか死ぬるとか騒ぐやつがよくあったが、それはみな自負心だ。うぬぼれだ。うぬぼれをのければ、国家の為に尽くすという正味の処は少しもないのだ。それゆえに、もし、そんな自負心が起こったときには、おれは必死になってこれを押さえつけた。 、、、略、、、。
 「お前も今日政府の役人であるから、あっぱれ国家の為に尽くしているのだとうぬぼれているが、試みにそのうぬぼれをのけて平気に考えてみるがよい。車夫や馬丁がその主人に仕えるほかに、なお国家に尽くすところがあるとすれば、お前のはそれに比べてどうだろう。」と言って聞かせたら、お役人殿、「なるほど」と感服していったよ。』
 
 まあ、国家の為に尽くすのも程度の問題で、全身全霊365日24時間をかけて尽くすという人もあれば、9時から5時まで週休2日という人もますね。あるいは週末だけとか。要は自分の仕事の本質を見誤るなという事だと思います。

 正門前ではポニーテイルの婦人警官が交通整理をしていますが、背が高くてなんだかモデルさんみたいな女性ばかり揃えています。交代の時なんかシャナリシャナリと歩いて。でもやっかいなことになるので写真は無し。
 
 さて、どんどん行くと右の方にチャクポリ(薬王山)が見えてきます。元々はチベット医学の中心というか研究所の様なところです。現在は医学関係の施設はなく、頂上には無粋な電波塔、隣りには軍の施設とすっかり様が変わっています。石板にチベット文字を彫刻している人、タルチョと呼ばれる赤、青、黄色、緑、白の旗、お祈りの為の旗を売りに来るかなり熱心なチベット人、お土産屋さん、もちろんお参りに来た人々などが細い道を登って行きます。岩山です。10分程で頂上に着くと、お寺があります。また岩の壁には色鮮やかな沢山の仏画が描かれています。その前で何人ものチベット人五体投地の祈りを捧げます。傍らにはペットのワンちゃんがのんびり。チベット人はペットが好きで、よく一緒に巡礼しているところを見かけます。
 フト見ると小さな部屋があり、ろうそくが何千本も灯っています。部屋の中はサウナみたいな暑さです。一本一本のろうそくの熱は微々たるものですが何千本と集まるとやはり強く大きくなります。多くのチベット人の祈りの力を象徴している様です。一人一人の力は弱くても、何十何百万人と集まれば、大きな力になる、と。

 チベット人の置かれた境遇は厳しいです。最近(2011年4月25日現在)四川省の寺院のニュースが多く採り上げられています。いわゆるチベット自治区の東側。昔から元々チベットだった地域で、今は四川省の中のチベット族自治州となっているエリアです。中国政府の宗教政策に反発、チベット仏教が自由に信仰できない事に抗議して、青年僧侶が焼身自殺をしたニュースが流れました。刑務所などでも相当の人権侵害が行なわれている事が容易に想像つきます。外国人の入国禁止などの措置も取られているとのことで、確かな事はなかなか掴めません。写真や動画を残すのも苦労すると言うより命賭けでしょう。諸外国の記者などが自由な取材をさせる様に中国政府に要求しても、それで見えてくることが、また事実とは全く限らない。
 多くの人にこうした事実を知って欲しいと思います。