12日目① ラサ 夏の離宮ノルブリンカ 11月21日(日)

 

 ダライ・ラマ14世が、陰鬱なポタラ宮よりも明るいノルブリンカの方が好きだったと、自伝で書いていることは前に触れました。その夏の離宮ノルブリンカを見ました。ラサ市内から106の20人乗りくらいのマイクロバスで20分。運賃は1元。ノルブリンカの拝観料は60元、800円くらい。

 確かに明るい。建物の中も採光が良く、高さも2階くらいで、特別大きくはない。威圧感もなく家族的、親しみを感じます。周りは広々とした林。池にはあひるが気持ち良さそう。竹林に守られた参道。犬ものんびり日向ぼっこ。静かで落ち着いています。気に入りました。しかし、今、主人はこの夏の離宮には来られません。
 宮殿というより軽井沢あたりの大きめの別荘という感じですが、中には各国からの贈り物の自動車とか、ラジオ、レコードプレーヤーなどもあります。洋式のバス・トイレのセットも。近代的。どの部屋もとにかく明るい。
 ポタラ宮薬王院などが遠くに見えます。遠くとは言っても、数キロの距離。ダライ・ラマは4月から9月まで、この離宮で暮らしたとのことですが、元々が避暑地の様な高地のラサ市内でちょっと移動しただけ。これは、ポタラ宮からノルブリンカまでの移動そのものがまた盛大で、ラサの人々がひと目ダライ・ラマを拝めたら、こんな幸せなことはない。そんなチャンスを作る為、ラサ市民に与える為に、わざわざ近い距離を大行列を作って移動したのだと思います。これ推測です。
 途中、少し息苦しくなったので、呼吸を小刻みにしたり、大きく深くしたり色々やってみました。ふー。

 ノルブリンカを出てすぐのチベット料理のレストラン兼ホテル。その名もノルブリンカチベッタンファミリーホテル。古き良き時代のポタラ宮付近の写真が飾ってあります。ボリュームのある水餃子。スープもうまい。ポットでミルクティ。部屋は小奇麗。宿泊しようかと一瞬考えました。静かだし1階のレストランはおいしいのだけれど、町中の便利さとか元気さがないとどうにも寂しいので今回はやめておきます。
 その後、来た時とは別の方に少し歩いて行くと、チベット人が住んでいる村という感じ。そこだけ舗装されてない。小さな小さな商店が一軒。ほんの数分歩いて舗装されたバス通りに出ると、商業ビルが並んでいます。ものすごい落差がこの、ラサ市内、ダライ・ラマの夏の離宮のすぐそばにあります。

 さて、今日は女性の日のお祭りなので、ガイドのジェムツォさんは五角や一元札を沢山握って歩いています。女の人は男の人に会うと誰でもいいから手を差し出し、小銭をねだります。もう10人くらいに渡していました。私もたまに被害者。

 ホテルに帰ってひと休みの後、ジョカンを見に行ったら早速囲まれてしまいました。ヤバーイと思ってニコニコして誤魔化そうとしていたら、
「今日は女の人のお祭りですよー。」と流暢な日本語。「知ってるよー。」とまた誤魔化して逃げちゃいました。どこで日本語を習ったのか聞いておけば良かったのに、馬鹿ですね。小銭を用意しておかないからいけない。でも、日本語を話す若い人がいるということは実に何か、希望が持てるなーと思いました。漠然とした希望です。ラサに来てから土産物屋さんの商売の日本語しか聞いてなかったし、ガイドのジェムツォさんとは英語、旅の仲間のスペインレディースとロシアンガイとも英語。第一、中国語は挨拶くらいしかできない。やはり元日本語教師としても一観光客としても日本語を聞くのはうれしいです。